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00243『漢呉音図』太田全斎

 

『漢呉音図』 00243
太田全斎 撰
全3冊
文化12年(1815年)5月序
太田全斎撰 『漢呉音図』

 

解 説
漢音・呉音は、漢字音の種類をいうもので、漢音とは、推古期から平安初期までに伝来した中国北方系の字音。古くから正音ともよばれ、隋唐時代の正しい発音を伝えたものとして、標準的な漢字音とされた。一方、呉音とは、中国南方音に本づき、朝鮮から伝えられたと称する字音である。さらに後世の輸入にかかる唐音(宋音)もある。一例をあげれば、次表のようである。
字音 漢音 呉音 唐音
ケイ キャウ キン
コウ ギョウ アン
ケイ
これらの字音の発音の法則、すなわち音韻学の研究は、平安初期から行われ、江戸時代にはいよいよ盛んとなり、僧契沖・僧文雄・本居宣長などがすぐれた成果を残しているが、太田全斎の研究はとくに精緻なものとして著名である。

全斎は上巻頭初の凡例に、研究の目標としてつぎの6項をあげている。

(1)阿耶王三行并拗音ヲ眞字ニ作ル一也。
(2)影喩第四等ヲ耶行ノ定位トナス二也。
(3)漢呉音並原音次音アルコトヲ発ス三也。
(4)二百六韻ノ左右ニ國母(カタカナ)上中下ノ韻ヲ記ス四也。
(5)三内(喉舌唇)ノ撥假字(ハネカナ)、
古ヘハ音博士アリテ正シカリシカ中古巳来乱シタルヲ復ス五也。
(6)於ノ字(十一転)開音ナルヲ徴ス六也。
此六ヲ立テ 字音ノ國字(カナ)ヲ定メシ也
この指標に沿うて、上巻では、唇音・舌音・歯音・喉音・舌音に分けて、色々の韻を原則的に配列する。中巻では、第一転合から第四三転合まで、それぞれに相当する文字をあげ、その音声や韻を説明している。下巻は文章をもってする音韻学上の専門用語の解説である。以上、内容はきわめて難解ではあるが、現代の音韻学においても十分通用しうる精密な学術書であると思われる。

 

出典1:『誠之館記念館所蔵品図録』、73頁、福山誠之館同窓会編刊、平成5年5月23日
2006年11月13日更新:レイアウト●