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00126「家書」(川副惟精)

 

書「家書」 00126
川副惟精 書
30.8 ×124 cm

 

↓前半
10

 

↓前半・読み下し
10
 
 
 
 
 

 

↓後半
22
 
 
 
 
21
 
20
使
19
18
17
16
15
14
13
12
11

 

↓後半・読み下し
23
 
 
 
 
 
 
 
22
 
20
19
 
18
17
16
15
14
 
13
 
11

 

大 意
忽ちにして文書が、郷里から届いた。
これは則ち、父母が誠心を持って捜しあててくれたお陰である。
この本を開いて読みたいが、未だ開かない。心は万里の彼方にあるのだ。
従って未だ書中に何事を説いているのか承知していない。
ようやく隙を得て怱々にこれを黙読した。
先ずは、我が一家に異をとなえるものがなく、喜ばしいことだ。
これを読み反覆熟読して、愈々切実に知識を深めた。
そこで丁度家族が一堂で顔をあわせて話し合ったことだ。
彼女もこの戒めの言葉が縷々と続くのを悦んだ。
10 今、夏の盛りになったが、世の中は国家の威信を侵されることもなく安穏である。
11 従来難解な書物が多いので、我等が読書しても気分が欝ぎ易かった。
12 そのため閑をぬすんで旅行したりして、読書研究の困難に苦しんだ心を慰めたものである。
13 これらのことについて、父親は何らの不平や小言を言わなかった。
14 ただこの箴言を書いているこの書物を孜々として寸陰を惜しんで読解に努力した。
15 この箴言は常識と異なるような心持だけれど、実にその本意は和気藹々として和らいでいる。
16 これは皆、慈しみの情の深さから泌み出ているものである。
17 この慈愛の心の根本は何であろうか。それはこの書物を反覆して読み、詩や歌のように歌うほど勉強することだ。
18 これから燈火をかき立てて明るくし、文章や手紙を書こう。
19 お客さま方に自分の難関辛苦したことは話しますまい。
20 私は、我が父母の慈愛に満ちた労わりの心を曲げてしまうことを恐れる。

 

↓姓名印 ↓雅号印

 

↓遊印

 

訳 注
匆々(そうそう) いそがしいさま、あわただしいさま、さわがしいさま
阿嬢(あじょう)
遊行(ゆうこう) ぶらぶらと目的もなく歩きまわること
阿爺(あや) 父親
孜々(しし) せっせと、こつこつと
豈々(がいがい) 楽しむ、やわらぐ
猾剔(かってき) かき立てる
簡牘(かんとく) 文書、手紙、書物、竹簡木牘(ちっかんもくとく)の略
(落款)川副邁 邁は川副惟精の名
(姓名印)邁印 邁は川副惟精の名
(雅号印)袴川 袴川は川副惟精の号
(遊印)松浪軒

 

未装