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00099書幅「草書千字文」(門田重長)

 

書幅「草書千字文」 00099
門田重長 書
明治40年(1907年)7月25日
紙本軸装 137.5×66 cm
↓読み(落款行)
 
 
 
廿

 

↓読み(本文)
天地玄黄 宇宙洪荒 日月盈昃 辰宿裂張 寒来暑往 秋収冬蔵 閏余成歳 律呂調陽
雲騰致雨 露結為霜 金生麗水 玉出崑崗 剣号巨闕 珠称夜光 菓珍李奈 菜重芥薑
海鹹河淡 鱗潜羽翔 竜師火帝 鳥官人皇 始制文字 乃服衣裳 推位譲国 有呉陶唐
弔民伐罪 周発殷湯 坐朝問道 垂拱平章 愛育黎首 臣伏戎羌 遐邇壱体 率賓帰王
鳴鳳在樹 白駒食場 化被草木 頼及万方 蓋此身髪 四大五常 恭惟鞠養 豈敢毀傷
女慕貞潔 男効才良 知過必改 得能莫忘 罔談彼短 靡恃己長 信使可覆 器欲難量
墨悲糸染 詩讚羔羊 景行維賢 剋念作聖 徳建名立 形端表正 空谷伝声 虚堂習聴
禍因悪積 福縁善慶 尺壁非宝 寸陰是競 資父事君 曰厳与敬 孝当竭力 忠則尽命
臨深履薄 夙興温清 似蘭斯馨 如松之盛 川流不息 淵澄取映 容止若思 言辞安定
篤初誠美 慎終宜令 栄業所基 藉甚無竟 学優登仕 摂職従政 存以甘棠 去而益詠
楽殊貴賎 礼別尊卑 上和下睦 夫唱婦随 外受傅訓 入奉母儀 諸姑伯叔 猶子比児
孔懐兄弟 同気連枝 交友投分 切磨箴規 仁慈隠惻 造次弗離 節義廉退 顛沛匪虧
性静状逸 心動神疲 守真志満 逐物意移 堅持雅操 好爵自縻 都邑華夏 東西二京
背芒面洛 浮渭據涇 宮殿磐鬱 楼観飛驚 図写禽獣 画綵仙霊 丙舎傍啓 甲帳対柱
肆筵設席 鼓瑟吹笙 升階納陛 弁転疑星 右通広内 左達承明 既集墳典 亦聚群英
杜藁鍾隷 漆書壁経 府羅将相 路侠槐卿 戸封八県 家給千兵 高冠陪輦 駆轂振纓
世禄侈富 車駕肥軽 策功茂実 勒碑刻銘 礬渓伊尹 佐時阿衡 奄宅曲阜 微旦孰営
桓公匡合 済弱扶傾 綺廻漢恵 説感武丁 俊乂密勿 多士寔寧 晋楚更覇 趙魏困横
仮途滅狢 践土会盟 何遵約法 韓弊煩刑 起翦頗牧 用軍最精 宣威沙漠 馳誉丹青
九州禹跡 百郡秦并 岳宗恒岱 禅主云停 雁門紫塞 奚田赤城 昆池碣石 鉅野洞庭
曠遠綿寞 巌岫杳冥 治本於農 務茲稼穡 俶載南畝 我芸黍稷 税熟貢新 勧賞黜陟
孟軻敦素 史魚秉直 庶幾中庸 労謙謹勅 聆音察理 鑑貌弁色 貽厥嘉猷 勉其祇植
省躬譏誡 寵増抗極 殆辱近恥 林睾幸即 両疏見機 解組誰逼 索居閑処 沈黙寂寥
求古尋論 散慮逍遥 欣奏累遣 惜謝歓招 渠荷的歴 園莽抽条 枇杷晩翠 梧桐早彫
陳根委翳 落葉飄搖 遊鶤独運 凌摩絳霄 耽読翫市 寓目嚢箱 易輸攸畏 属耳垣牆
具膳餐飯 適口充腸 飽飫亨宰 飢厭糟糠 親戚故旧 老少異糧 妾御績紡 侍巾帷房
絹扇員潔 銀燭偉煌 昼眠夕寐 藍笋象床 絃歌酒讌 接杯挙觴 矯手頓足 悦予且康
嫡後嗣続 祭祀蒸嘗 稽額再拝 悚懼恐惶 牋牒簡要 顧答審詳 骸垢想浴 執熱願涼
驢騾犢特 駭躍超驤 誅斬賊盗 捕獲叛亡 布射遼丸 坙琴阮嘯 恬筆倫紙 鈞巧任釣
釈紛利俗 並皆佳妙 毛施淑姿 工顰妍咲 年矢毎催 羲暉朗曜 銭槻懸斡 晦魄環照
指薪脩祐 永綏吉劭 矩歩引領 俯仰廊廟 束帯矜荘 徘徊瞻眺 孤陋寡聞 愚蒙等誚
謂語助者 焉哉乎也

 

↓読み下し(文選読み)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
宿
 
 
 
 

 

↓姓名印 ↓雅号印 ↓遊印

 

解 説
千字文(せんじ・もん)とは、中国の習字の手本。千字の異なった文字からなる韻文で、梁(りょう)の周興嗣(しゅう・こうし)の作といわれる。日本には6世紀ころに伝わった。

文選読みというすこぶる愉快な読み方がある。原則は漢語を最初に音読し、次にそれを日本語の意味を補いながら訓読するという読み方をする。日本ではこの文選読みで「千字文」を声を出して読む。千字文は漢字の「いろは歌」のようなものだが、なにしろ漢字をぴったり千字ぶん使いきっているところがさすがに中国である。調子もいい。第一行「天地玄黄」に始まって、そのまま四言づつ250句の韻文をつくりながら総計千字を重複せずに駆使し、最終行「謂語助者、焉哉乎也」と結ぶ。しかもこれらは意味が通っていて、天地創造・天体の運行・池の惠み・人事・歴史・自然・修身・日常活動など、ずいぶん中国の故事逸話がとりこまれている。

6世紀前半のころ、梁の武帝が王子たちに手習いをさせるため、王羲之の筆跡から重複しない一千字を選ばせて、これを一枚づつの模本にさせた。ところがこれでは面白くない。学習も進まない。そこで武帝は周興嗣をよんで、「これを韻文になるように組み立てて欲しい」という難問を出す。周興嗣は一晩徹夜をして千字の韻文をつくりあげ奏上した。おかげでその一晩で髪が真っ白になったと韋絢の『劉賓客嘉話録』にある。筆と墨の文化を持つ中国でも日本でもひっぱりだこだった。書道文化史上、こんな便利なものはなかった。

 

誠之館所蔵品
管理№ 氏 名 名  称 制作/発行 日 付 コメント
05236 周興嗣 著 『千字文』 (岩波文庫) 岩波書店 平成9年 小川環樹・木田章義 注釈

 

訳 注
(落款)杉東書屋 杉東書屋は門田重長の屋号
(落款)福山中学校 廣島県立福山中学校、いわゆる誠之館の明治34年(1901年)~昭和2年(1927年)の正式名称
(落款)門田重長 門田重長のこと
(姓名印)門田重長 門田重長のこと
(雅号印)侞松 (じょ)は、①ひとしい、②従えならすの意。
(遊印)今人古思

 

出典1:『新世紀ビジュアル大辞典』、1415頁、学習研究社編刊、1998年11月9日
出典2:HP「松岡正剛の千夜千冊『千字文』周興嗣」
出典3:『千字文』 (岩波文庫)、周興嗣著、岩波書店刊、平成9年