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00008七言律詩「芙蓉積雪」阿部正精

 

七言律詩「芙蓉積雪」 00008
阿部正精 
文政7年(1824年)元日
絹本墨書 159×48 cm
↓読み
 
稿

西

 

↓読み下し
西

 

↓姓名印 ↓雅号印 ↓遊印

 

解 説
文政6年(1823年)10月、病いと称して閣老を辞した正精に対して、その侍医にして文学の友であった伊澤蘭軒は、翌文政7年(1824年)甲申元日、病気快癒を祝って二首の詩を奉った。下記の律詩は、その内の一首である。

正精が、この詩の韻に和して詠じたのが、この「芙蓉積雪」の律詩である。   (出典1)

 

伊澤蘭軒 七言律詩「霞光旭影」
読み
読み下し

 

大 意
霞光、朝日が東軒に満ちあふれ
暮れの酒も初めて醒めて椒酒を飲む
春ののどかな心持ちはやわらぎ、老いのやってくるのも忘れる
身はまだ何となくけだるく役に立たず、人の論ずるに任す
かすみがうすくかかって、山の色は青いけれどもまだあわい
季節は早く、梅の花の香が已にいっぱいである
もっとも、喜ぶは吾が公の疾病の無いことである
公は鶯の声を聞きつつ、玉飾りの履物で林園を渉っておられる

 

訳 注
芙蓉 富士山
正元 元日
椒罇(しょうそん) 香ばしい酒樽、山椒や種々の薬品を調合して造った酒、神に献じまた正月元旦の祝酒とする
荏苒(じんぜん) 歳月が長引くこと
年光 歳月
なまめかしい
太平和楽 世の中が治まっているさま
伊澤信恬(のぶさだ) 伊澤蘭軒の名
甲申(きのえ・さる) ここでは文政7年(1824年)、正精51歳
(姓名印)阿正精印 阿正精は阿部正精のこと
(雅号印)字子純 子純は阿部正精の字
臘酒(ろうしゅ) 陰暦12月に醸造される酒
(らい) ものうい
珠履(しゅり) 玉で飾ったくつ

 

出典1:『誠之館記念館所蔵品図録』、57頁、福山誠之館同窓会編刊、平成5年5月23日